02 人に優しい未来のクルマ社会を創る 世界へと広がる新しいマーケットを拓いた1cm角の小さな“最先端デバイス” そこに込められたエンジニアの誇りと喜び

中原 明宏の写真

パワーマネジメントデバイス事業部 シニアデザインエンジニア 中原 明宏 Akihiro Nakahara

Profile

1996年入社。中学生の時に巻き起こった“マイコンブーム”をきっかけに父親譲りのエンジニアの血が騒ぎだし、「とにかくマイコンに触れたい」と電気制御科がある高等専門学校に進学。そこで制御技術の魅力に触れ、その道を極めんと工業大学、さらには大学院へと進み、制御工学を学んだ。NEC(当時)に入社した後は半導体設計一筋にキャリアを積み重ね、現在は“パワーマネジメント設計の第一人者”としてIPD開発の指揮を執っている。九州男児だけあって、実は外見に似合わぬ酒豪でもある。

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安全で快適な走りを実現するインテリジェントカー。
その進化のカギを握る“インテリジェントなデバイス”

居住性や機能性を高め、安全で、快適で、経済的な走りを実現するインテリジェントカー――近年、自動車の安全・環境性能に対する世界的な規制強化を背景に、カーエレクトロニクス技術はますます進化のスピードを速めている。
「そうした“インテリジェンスな自動車”は、エンジンからハンドル操作、ランプ、安全装置に至るまで、ほとんどが電子的に制御されています。そのため近年は搭載する電子制御ユニット(ECU)の数もどんどん増えてきているわけですが、それは一方で自動車を軽量化したいというメーカーの思いと反してしまう。…ではどうすればいいか? そのカギを握っているのが、この『IPD』という“インテリジェントなデバイス”なんです」と、中原は1cm角の小さなデバイスを手のひらのうえで小さく跳ね上げた。

「Intelligent Power Device(IPD)」とは、機械類のオン/オフを行う電子制御機能をはじめ、過電流・過熱状態を検知する保護機能、出力電流モニタ機能や自己診断出力機能などを集積したデバイスのこと。自動車分野では、電子制御ユニットの小型化・軽量化、きめ細かなON/OFF制御、安全性・信頼性の向上などを目的に、従来の機械製スイッチリレー(メカニカルリレー)をIPDに置き換える動きが活発化している。

中原さんの写真「メカニカル・リレーには安価だというメリットがある一方で、大きくて重く、スイッチの接点が磨耗するという“寿命”の問題もありました。その点、IPDは小型・軽量で、スイッチングも電気信号で行うので摩耗することもない。さらに、電子制御ユニットとランプを接続するワイヤーハーネスが、接続異常を起こして過電流状態に陥った場合にも、異常を検出して自動的にデバイスを保護する機能ももっています。こう話すと、『じゃあ全部IPDにすればいいじゃないか』と言われそうですが、この高機能なデバイスをメカニカル・リレーと同等のコストでつくるのは、並大抵のことじゃないんですよね」
そういって苦笑いを浮かべる中原。その手のひらの上の小さなデバイスには、その道の第一人者だけが知る、喜びと苦労が凝縮されていた――話は、2002年の冬に遡る。

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潜在ニーズが眠る欧州のIPD市場に
“Made in Japan”の高付加価値製品を投入する

2002年の冬、上司から呼び出された中原は、ある新規プロジェクトへの参画を要請された。「難しいテーマだけど、なんとかメンバーを引っ張っていってくれ」と肩を叩く上司に、笑顔でがんばります、と答えながら中原はエンジニアとしてのモチベーションが一気に高まっていくのを感じていた。このプロジェクトは、なかなか手応えがありそうだ――と。

今回のプロジェクトのテーマは「欧州市場向けランプ駆動用IPDの開発」。当時すでにNECエレクトロニクスは、エンジン制御用のIPDをリリースし、高い市場シェアを獲得していた。しかし、エンジン制御に使用されるIPDは自動車メーカーごとのカスタムメイドとなるため、苦労をして開発しても、それを他のメーカーに応用展開することはできなかった。そこでNECエレクトロニクスが目をつけたのが、汎用品として供給できる車体制御/安全制御用のIPDだったのである。

「汎用品として需要のボリュームが見込める汎用IPDって何だろう…と市場調査をかけていった結果、自動車の電子化が進んでいる欧州市場でランプ駆動用IPDの潜在的な需要がかなりあることがわかったんです。それが、そのまま開発テーマになったわけです」と、中原は当時を振り返る。

中原さんの写真「しかも当時、欧州市場でランプ駆動用IPDを生産している半導体メーカーは2社だけで、マーケティング部門の情報によると両社の品質やサポート、デリバリーに関するお客様の不満も少なくありませんでした。そうした後押しもあって、プロジェクト全体に『“Made in Japan”ならではの高品質な製品・サービスを提供して、欧州市場に新しい風を起こそう』という雰囲気がありました」

しかし――中原が「手応えがありそうだ」と予感したとおり、プロジェクトはいきなり大きな難題に悩まされることになる。

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